次回公演


客演座談会


劇団しようよ さよならのための怪獣人形劇『パフ』の京都公演を控えて、本作に客演いただいているみなさんからお話をうかがいました。

お話を伺ったのは、3月の『パフ』初演に引き続きご出演いただく高山涼さん、夕暮れ社弱男ユニットの御厨亮さん、劇団しようよ2度目の参加となるクリスティーナ竹子さんのお三方です!


―――まずは、東京公演、お疲れさまでした。お三方ともそれぞれ東京公演の経験はおありですが、今回、劇団しようよの東京公演はいかがでしたか。


竹子 しようよで行ったからではないけど、旅公演特有の、行った後にどっと疲れが来るような(笑)。でも、お客さんの観点はどこなんだろう、という思いはありました。知り合いではない人たちが多い環境で、この作品がどう観られるんだろうと構えてしまいました。

御厨 王子小劇場の舞台に立つのが初めてで、その初めての体験が劇団しようよの公演だったことを含めて、すごくいいなと思ったのと、舞台美術も王子小劇場のサイズ感にぴったりで、やってて面白かったです。

高山 いつも東京で舞台に出ると、お客さんに穿った見方をされてるんじゃないか…とびびってしまうんですよね。実際はそうじゃないと思いますけど。でも、どこか関西とは違った温かい目線や厳しい目線があって。ただ今回は特に、ホームの京都でやれることの安心感があります。


―――東京公演が先で、京都公演が後、という順番はどうでしたか?自分たちの本拠地での公演が先で、それから他地域に…という順番が多いように思いますが。


竹子 一度お客さんの目に触れたものを改めて提示するほうが、明らかに完成度が上がるじゃないですか。どっちをポイントにしてるのか?というところで、劇団しようよはやっぱり京都なんだなと思いました。

御厨 まず反応を見るという意味では、東京には、劇団しようよという劇団がどういうことをしているのか知らないお客さんもいるので、新鮮なところがあると思います。

高山 フィルターがかかってない、色眼鏡なしで観てもらえるような。


―――ただいま京都公演に向けての稽古中ですが、稽古場の様子はいかがですか。

竹子 東京公演まで駆け足で過ぎていって、京都公演ではさらに洗練されたものをと思っていたので、ここにきて尺を削ろうとか、新たな試みをということに、また新鮮な気持ちで挑めています。一回公演が終わると安心してしまうので、できれば変化を求めたくて。まだ極めていないし、ここで終わったらもったいないので、今はうまい具合に走り続けている感じがします。

御厨 例えば、シーン毎の強みや弱点みたいなことが分かってきているので、大原くんが今バシバシ作品を削ったり調整したりしているのが、やっていて楽しいし、なるほどなって思うところもたくさんあります。


―――3月の初演にも高山さんにはご出演いただきましたが、御厨さんにはその初演をご覧いただいています。竹子さんには、『パフ』に関してはまっさらな状態でご参加いただいていますが、1年前に『アンネの日記だけでは』にご出演いただいています。1年前と違いはありますか?


竹子 前回は、作家・演出家の大原くんが何をしたくて、何を役者に求めてるか手探りだったので、果たして最後に合わせられたのか…ということだったと思うんです。でも今回は、どういうことをしてほしい、という言語を共有できてきた気がします。まだまだ要求に応えきれない部分も多いと思うけど、「ああ、それね!」みたいに、ちょっと反応が良くなって、本質的な部分で関係を結べてきたかなと思ってます。『パフ』の初演をまったく観ていないのは、申し訳ないけど私としては良かったと思っていて…、引きずられやすいんですよ。初演をそのままトレースしてしまいそうになる。今回はまっさらでいいなと思ったけど、下地ができている中に飛び込むのはちょっと怖さもありましたね。

―――御厨さんには、初演のプレビュー公演という、一番出来たてのものを観ていただいて、今回はご出演いただいていますが。


御厨 作品の違いでいえば、今回のほうが全体の印象として優しくなったのと、風通しが良くなったと思います。大きな違いとして、主人公のぼうやとお兄ちゃんの関係性がガラッと変わっていて。大原くんはこっちを見せたかったのかな…みたいなことが、やりながらようやく見えてきました。ぼくは、どちらかというと初演にはまったく引きずられなくて。逆に、観て情報を得た上で、自分はこういうことができるなということを考えられたのが楽しくて、観ておいてよかったです。なので、一からつくるくらいの気持ちでやれたのは良かったなと思ってます。

 

―――高山さんは、初演と比較して今回はいかがですか。


高山 そうですね…、でも、どちらもあまり考えすぎないで、今あるものを今あるように、という感じですね。しようよに出るのが4回目で、最初はずいぶん萎縮して、ちょっと頭でっかちになってたんですけど、今はもう泳ぐようなイメージで稽古しています。もちろん考えることは考えるんですけど、大原さんとも感覚でやり合えたらいいなと思っています。大原さんと言葉少なにできるのがありがたくて。

―――初演は人形におもちゃなどを使っていましたが、今回はすべて人形を使っています。この変更はいかがですか。


御厨 人形そのものにフォーカスが当たりやすくなったと思います。きっと、初演は人形ではないから、どう動かすのか、動かし方でどうなるのか、ということではなかったと思うんです。人形になったことで、人と人形、というフォーカスの当たり方になるのはおもしろいですね。

高山 人形じゃなかった代わりに、舞台美術を建て込みましたからね。今回は、人形はつくっているけど舞台は簡素で。


―――高山さんの場合、初演と演じ方に違いはありますか?


高山 初演はもはや、おもちゃじゃない物もありましたからね。ペットボトルとか。

御厨 お兄ちゃんが持っているウィルキンソンとか、大好きだったですけどね。本当にそのまま持ってきたんじゃないか?ってことも含めて。

高山 お兄ちゃんがウィルキンソンっていうのは、割と評判良かったですね(笑)。でも今回のほうが、感情をきちんと込めよう、みたいな意識は働いている気がしますね。初演は持っているものと、どこか距離があったので。

御厨 人形を使う芝居とか台詞を発する行為って、自分も小さい頃はそうやって遊んでいたし、スッと出来るかなと思っていたら、予想以上に難しくて。呼吸や間合いが、人形を通したら掴めなくなる瞬間があるんですよ。普通の身体で出てそこで台詞を発するのは慣れていたけど、人形を通して台詞を発するのは、簡単なようで実は意外と難しいんじゃないかと思ってるんです。

高山 初演はめちゃ苦労しましたね。大原さんがどこを見せたいのか…手元の人形か、人か、もっと広いのかということもあるし、また自分の中で腑に落ちるのもそうだし。

竹子 難しいけど、私はあまり考えてなくて。東京公演では自分の顔と持っている人形が常に一緒に見えてたから、どっちみち人形を操っていても、最終的には人形遊びをしてる私でしょ?って思いました。最初は声色を分けようとか、キャラをしっかり付けようとか思ったんですけど、やってるのは全部私だって見えてるし…って思って。

 

―――劇団しようよはこの春に劇団員が増えて体制が変わったのですが、現在の状態はどのように見えていますか?

竹子 変わったよね。「劇団」しようよになったよね…。『アンネ』に参加させてもらった時は、期間劇団員はいても音楽家の吉見くんが不在で、作・演出とドラマトゥルクのふたりが自転車を漕いで周りを引っ張っていく感じで。今回は吉見くんも出演しているし、三本柱プラス劇団員3人で、劇団になりました、という感じに見えます。

御厨 ぼくがしようよを観たのは『パフ』が初めてだったんですが、まず形態が面白い。作・演出と音楽家とドラマトゥルクがいて、しかも作・演出は舞台に出る。今はそこに俳優の劇団員がいて、まず劇団員の成り立ちがおもしろいと思うし。作風について、『パフ』だけで素直に思ったのは、あまり邪気を持って観るとよくない、無邪気に観るべきだなと思いました。そうすると、多分すっと通りやすくなる作品をつくっている気がします。

高山 ぼくは2年くらい出てますからね。初めて観たのが『ガールズ、遠く―バージンセンチネル―』で、その時は尖ってる印象が強くて。路上パフォーマンスもしていて、舞台で生演奏の作品を観るのも初めてだったので…。バイタリティがあるイメージがあって。今も客観的に見て、大原さんの世代で東京や九州に行ってる劇団ってなかなかないですよね。活発なイメージが強いです。

御厨 視野をちゃんと広げてるというか、いろんな人の評価を聞きたいということはとても感じますね。

 

―――そんな劇団しようよが皆さんとつくっている『パフ』なんですけど、どんな方に観ていただきたいですか。

 

竹子 ちっちゃい物やかわいい物、人形に惹かれる方々には易しく入れるかなと思うけど、でもストレートな作品でもないから、演劇をまったく観たことがないという人にどう観られるか…。でも、お楽しみのシーンもあるし、小さい子や中高生に観てもらいたいかな。とはいえ、一番楽しめるのは、何度か演劇観たことあるとか、なんならちょっとかじっていたとか、そういう方々なのかなとも思います。

御厨 ぼくが初演を観て思った、先ほどの邪気、無邪気の話でいうと、子どもの頃は無邪気に何かを見たり遊んだりしていたのが、だんだん大人になると邪気が芽生えてくるじゃないですか。だから無邪気を忘れた大人に観てもらいたいです。言いたいこととしては、変な邪気持ち込んで観るなよ!みたいなことですかね(笑)。

高山 そうですね…うちの後輩(笑)。やっぱり、ほぼ人形劇じゃないですか。ぼくが芝居を始めて間もない頃にこれを観たら、衝撃だったと思うんですよね。こんなことしていいんだ、こんな攻め方があるんだ、みたいな。いわゆるお芝居のイメージと違うじゃないですか。なので、うちの後輩にかぎらず、学生劇団に入りたての子とか、ぜひいい意味で見方が壊れてほしいと思います。


―――最後に、あと1週間もしたら京都公演が終わるんですけど、『パフ』が終わったら何をしたいですか。


竹子 寂しいなあ…。みんなで旅行行こう。

御厨 夏にやり残したことを、今回のメンバーでやりたいなと思います。今回、夏をかなり無駄にしてるから(笑)、なんかやりたいっていうのはあるかな…。夏っぽいことしたいです。


―――高山さんはどうですか。


高山 実家に帰りたいです。